日々の買取り業務でお客様に尋ねられた疑問をコラムにして投稿します。皆様の参考になれば幸いです。それでは今回は矢立です。
矢立(やたて)概略
矢立(やたて)とは、筆と墨壺を組み合わせた携帯用の筆記用具一式のことをいいます。材質は金属・陶・竹・木など様々あります。呼び名の由来ですが、鎌倉時代に戦場において筆記する状況に備えて小型の硯と筆を箙(えびら)(※1)の中に入れて携帯し、その硯を「矢立の硯」と呼んでいたようでそこから携帯式筆記用具一式のことを「矢立:やたて」と呼ぶようになったそうです。毛筆による筆記がほとんど無くなったので今現在の日本ではほとんど使われなくなりました。その一方で、内閣閣議決定の場では閣僚たちの花押による署名が必要なので、持ち回り閣議などでは閣僚の署名を集めるために今も矢立が使われているそうです。
形状など
形状としては檜扇型(角材状の本体に墨壺と筆の収納部があり、その上にスライド式の開閉蓋を取り付けたかたち)、柄杓型(墨壺に筆を収納する筒を取り付けたかたち)、印籠型(墨壺と筆筒を紐で繋いだかたち)に大別されています。金属を使用したものでは墨壺のデザインも様々で象嵌技法が使われているお洒落なものもあります。柄杓型は頑丈で握り具合も良く、携行していても怪しまれなかったために筆筒に針・刃を仕込んだ物もあったようで護身用の隠し武器としても重宝されていたようです。
(※1)箙:えびら⇒武士が矢を入れて携帯する装備。これも矢立とも呼ぶ。
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