近重治太郎（ちかしげじたろう）

昭和期の小代焼（小岱焼とも）の陶工。1895（明治28）年、島根県江津の生まれ。石見焼の窯元に生まれるも1915（大正4）年頃に熊本県荒尾市万田に築窯しました。そのころ小代焼は明治維新の後は藩の庇護を断たれてから次第に衰えていき、一時は全くその跡をとどめぬほどになっていたそうです。そのことを憂いた治太郎は小代焼を復興すべく1931（昭和6）年に熊本市健軍（たけみや）に移窯しました。

小代焼は古老によれば「この器に五徳あり、曰く毒を解し、湿気残らず、腥臭（せいしゅう）住めず、物腐らず、延年長寿をなす、以て凡ならざるを察するに足る」という。健軍窯では陶土を小代より採り、小代焼の古法を習得し、新趣向を加味し、茶陶はもちろん日用食器に至るまで種類は多い。

昭和19年に技術保存の指定を受け、昭和28年に全国陶磁器展に入賞、昭和51年に伝統工芸功労者の表彰を受けました。銘款は「小代」小判印・長角印があります。現在も代をついで焼かれています。

※参考資料：黒田和哉「近世・近代茶陶の茶陶窯場名工名鑑」（淡交社）

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